石川けんじ
石川けんじ石川けんじ

保育園の指定管理者の指定について

2009,06,22, Monday

6月市議会で、住吉保育園の民営化に伴う名称の廃止、大師保育園・坂戸保育園・宮崎保育園、宿川原保育園の指定管理者を指定する議案が出され、日本共産党は、この議案に反対しました。
今回は、建て替えによる民営化と指定管理による民営化に関するものです。公立保育園の民営化にあたって、もっとも、懸念される保育の継続性とその質の担保です。市は引き継ぎ期間を6カ月とし、その間、共同保育を行うことで、円滑に民営化を進めることができると説明してきました。
しかし、その実態は、引き継ぎ期間中にも関わらず、指定管理者から派遣さた保育士が退職してしまったり、看護師の配置が遅れるなど、保護者にも大きな心配と職員への大きな負担をもたらすものとなりました。
今年度指定管理となった南平間保育園では、昨年12月に保育士が退職、その補充に主任保育士が当たり、事業者から保護者に対し、お詫びと対応策についての文章が配布されるという事態を招きました。さらに、同保育園では、1月に配置される予定の看護師が見つからず、引き継ぎ直前の3月24日に配置され、その看護師も事情により4月で退社、代わりの看護師と引き継いだものの、市の看護師も引き続き支援に入るなど、混乱がありました。宮前平保育園でも、2名が12月末で退職、白鳥保育園でも10月末で主任保育が退社するなど、今年度指定管理によって民営化した、すべての園で、引き継ぎ途中の保育士の退職がありました。
こうした事態に、こども本部長も「市が考えている通りの引き継ぎができなかった。ご迷惑をおかけしました。」と引き継ぎに混乱があったことを認めざるを得ませんでした。仕様書に引き継ぎ条件などを明記しても、そのことが、実行できているとは言えない実態があることは、「問題が起こらないように指導してゆく」とした市の態度では、市の責任を果たすことにはならないことを示しています。こうした事態を引き起こした原因を明らかにし、民営化より生じた問題が起こらないような、事前の対策を講じるべきです。
このような混乱の根底には、職員の処遇問題があり、人材不足の原因ともなっています。「市として職員処遇まで立ち入った指導が必要である」と対応を求めましたが、それに対する回答は「保育園の建て替えによる民営化の場合は、国の定める運営費のほか、市独自の補助金等を支弁して、安定した運営がなされている。指定管理者制度の運営についても、同程度の運営費が確保されている。」「運営費が人件費比率などを含め、適正に執行されているか、適宜、職員雇用等、運営状況の把握を行い、安定した運営の確保に向け指導してゆく」というものでした。
しかし、「安定した運営」という言葉とは裏腹に、民間事業者の中で働く保育士の労働環境は改善されず、園長でも年収400万円程度、経験ある保育士でも月給20万円そこそこで、ボーナスもなしという実態もあります。「給与が低く親元から独立することができない」こう話す若い保育士は例外ではありません。このような労働環境の下で、保育士の必死の頑張りに支えられているのです。しかし、その頑張りにも限界があります。その結果、民間で働く保育士さんの離職率は、19年度市内事業者を対象とした調査で、18.5%にも上り、公立保育園の2.7%と大きく隔たっています。人材不足は深刻で、民間保育園では、全国から人材を集めるということも珍しくありません。今年度、全国で5か所の認可保育園を開設したサクセス・アカデミーが指定管理者となった南平間保育園では、その職員7割が新規採用の職員で、職員のチームワークを作るのにも大変だったと側聞しています。優れた保育人材を世に送り出していくということからも、公立保育園の果たすべき役割は、大きなものがあります。
私たちは、民営化された保護者の「民営化されて、誰も幸せにならなかった。」という訴えを忘れることができません。引き継ぎの実態からも明らかなように、公立保育園の民営化で、それまでの保育の継続性や質を保つことは困難です。その点からしても、公立保育園の民営化は破たんしていると言えます。
今回の指定管理者の選定にあたっては、保護者と行政の話し合いの結果、仕様書に、保育士配置の「バランスのとれた構成」と「未経験の新任保育士を配置する場合には、新人1名に対し教育担当の保育士を1名配置する」ことを明記するなど、保育水準維持のための工夫が盛り込まれるなど改善が図られました。また、選考基準においても、職員の確保や適正な職員配置の項目の評価点を上げる改善も図られました。いずれも、保護者の粘り強い交渉の成果だと思いますが、そのことが、今後の運営の中で、実施される保証がこれまでの審議で明らかにならなかったこと、保育の質が保たれないことへの懸念が払しょくできないことから、本議案には賛成できないことを表明しました。