石川けんじ
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住民の移動権の確保は国と自治体の責務です

 

130731_1514~01多摩区長尾台地域のミニバス(試行運行9月末まで)

川崎市のコミュニティー交通に対する支援費は、2012年度決算額で、1669万円余です。そのうち970万円は前値度からの繰り越し事業費ですので、約700万円に過ぎません。コミュニティー交通の実現が切実な地域要求になっているのに対し、あまりに不十分は予算配分です。

  本市の地域交通の取り組みは、2000年度と2001年度で行われた「バス交通対策実施計画調査」で「交通不便・空白地域」の抽出を行ったことから始まりました。12年以上たった今、実現した事例は、宮前区の南野川地住宅自治会の運行する「みらい号」と麻生区高石地区を運行する「山ゆり号」しかありません。 

  現在、試行運行を行っている多摩区の長尾地区の「あじさい号」(写真)、宮前区有馬・東有馬地域の取り組みなど、ミニバス運行の実現に向け熱心な取り組みが行われていますが、「採算性」の壁は、その実現を阻んでいます。私たちは、運行経費への市の財政的支援を再三求めてきましたが、自治会の運行する「みらい号」には、補助金はありません。「山ゆり号」に対し「高齢者・障がい者」の利用料を1回あたり100円補てんしていますが、採算をとるために料金を300円と少し高く設定せざるを得ませんでした。

今年の予算議会で財政的支援の充実について、市長に質したのに対し、市長答弁は、「受益者負担を原則」として「住民主体交通改善に向けた取り組み等への支援を行う」というものでした。しかし、「受益者負担の原則」といって、「公的」責任を曖昧にしてはなりません。

近年、「交通・移動する権利」は、新しい人権として認められるようになりました。ここ数年の国の「交通基本法」をめぐる議論の中にも「『交通』とは、人や物が移動するだけでなく、その意義は、経済活動・社会活動の基礎という機能を持ち、人が人間社会において文化的に、また、未来に向かって創造的に生きてゆく活力の源泉になる」との指摘もあり、国や自治体の役割も問われています。住民の移動権の保証の主体は、「受益者」にあるのではなく、「国」や「自治体」にあるべきものと思います。