石川けんじ
石川けんじ石川けんじ

問われる新たな“呼び込み型”企業誘致策 殿町3丁目の用地取得に23億円

   川崎市は、4月の市議会臨時会で、川崎区殿町3丁目の土地約1.3ヘクタールを都市再生機構(UR)から約23億円で購入する議案を提出します。今回の土地の取得は、羽田空港再拡張に伴う神奈川口構想の中核施設の整備を狙ったもので、第1段階の整備として、現在、宮前区野川にある「財団法人実験動物中央研究所」に、0.6ヘクタールを市が貸し出します。さらに、第2段階として、0.7ヘクタールを公募で借りる事業者を決めることになります。研究機関を補助金(整備費用の1割補助)を付け誘致し、周辺に関係企業を集めようとする企業の呼び込み政策です。

市長は「ライフサイエンスや環境関係の国家プロジェクトを誘致したい」と言うけれど

新聞報道によると、阿部市長は、4月7日に行われた記者会見で、「世界中からの研究者の行き来に便利なエリアで、日本の成長戦略をけん引するような研究機関を集めたい。そうなれば、ホテルやコンベンション等の提案も自然に出てくる」と「夢」を語り「国家プロジェクト」に積極的に乗る姿勢を表明しています。しかし、「国家プロジェクト」自体に問題があり、川崎市でも、過去にも輸入促進の目指した「FAZ事業」(コンテナーターミナルの整備など)等の失敗など苦い経験があります。

神戸市の「医療産業都市構想」にも大きな問題が

川崎市より先んじて「医療産業都市構想」という<先端産業の誘致>を進めている神戸市でも、企業の定着は進んでいないのが実態のようです。現在、158社が進出をしていますが、土地を購入して定着しているのは、27社、120社が賃貸での進出で、「賃料補助等の期間が終了すれば、撤退する企業も増えるのではないか。」と言われています。すでに、撤退した企業は67社にものぼります。

地方自治体の役割は、新たな企業の呼び込みではなく、市内の優れた中小企業の支援ではないでしょうか。

川崎市には、優れた技術が中小企業に蓄えられていますが、その企業が工場の維持費にも窮する、困難な実態にあります。2010年度の市の中小企業支援関連の事業費予算は、融資を除くとおよそ10億円で、今回の土地購入費の半分にも満たないものです。地方自治体としてやるべきことは、「国家プロジェクト」に踊らされて、先端企業の誘致に多くの税金をつぎ込むことではなく、市内中小企業の支援を抜本的に強化することにあるのではないでしょうか。

工場の家賃補助やリース代など固定経費への補助こそ、取り組むべきです。

日本共産党市議団では、2010年度予算の組み替え(110億円)を提案し、その中に、工場の家賃補助、機械リース代等固定経費への補助を行う提案を行いました。過去の破たんした「呼び込み型産業政策」を改めて、優れた技術を持ちながら経営が困難にさらされている、中小企業にその支援策を強化することが、川崎市の経済の可能性を広げることになります。阿部市長には「国」に目を向けるのではなく、市民に目を向けた産業政策を望みたいものです。